初めての愛馬記念 ありがとうモーリーファ 最終章 ~自ら繋いだ覚悟の道~
初めての愛馬記念 ありがとうモーリーファ その1 ~デビュー前夜~ - 清純派パドック予想師!誠意の競馬日記と反省 そして 一口馬主へ
初めての愛馬記念 ありがとうモーリーファ その2 ~失意のデビュー戦からの苦難の道~ - 清純派パドック予想師!誠意の競馬日記と反省 そして 一口馬主へ
■ 迫り来る最後の時
掲示板に載ることができなければ終戦。
この時点で繁殖にあがれないことは半ば覚悟していたので、凡走した瞬間にモーリーファとの1年3ヶ月に及ぶ関係が終わってしまう。
そんな運命の分かれ道となるレースは 8/20(日)札幌3R 3歳未勝利〔D1,700m・14頭〕 となった。
丸山元気騎手の進言通り距離を伸ばすことにはなったものの、やはり芝中距離で悔いのないレースを、という思いもあり、なんとも複雑な気持ちを抱えつつ社畜生活を送っていた。
◇ 2017年8月17日の近況
近況
モーリーファ[父 ヴァーミリアン : 母 チャイナドール]
在厩場所:函館競馬場
調教内容:函館ダートコースで16日に時計
次走予定:今週日曜の札幌・D1,700m〔丸山元気〕
和田雄二調教師「先週も除外になってしまい、ここまで予定が延びていましたが、状態に関しては問題なく維持できています。16日には函館ダートコースで単走で追い切りを行いましたが、動きは悪くなかったと報告を受けています。出来れば牝馬限定戦に向かいたかったところでしたが、頭数も多く除外になる可能性もあったので、一般の方に投票させていただきました。引き続き丸山騎手を確保できましたし、あとは距離を延ばしての挽回に期待したいところです」
なんとも冷静なコメントである。
これまでの走りぶりからも最後のレースになることを覚悟し、厳かな気持ちでウインズに向かった。
人気はこれまでのレース結果を反映した11番人気である。
■ 勝負の6戦目 2017年8月20日(日)札幌3R 3歳未勝利〔D1,700m・14頭〕
スタート後、作戦通り後ろからのレース。
3コーナー手前ではまだ後方、丸山騎手の手が動く。4コーナー手前でまだ後方、丸山騎手の鞭がうなる。
大外を回り、終戦を覚悟した最後の直線。
なんとモーリーファが大外から凄い脚で追い込んでくるではないか!
もはやブロードアピールに見える親馬鹿っぷり。
人もまばらなウインズで馬名を呼ぶのは憚られるので、
マルヤマ!マルヤマッ!マルヤマがんばれ!と冷静さを欠いた小声で呟く。
9着、8着、7着...と順位をあげ、残り50を切ったあたりで4着まで順位をあげてそのままゴール!!
やったー!!!
思わず声をあげた。
競馬で「やったー」と言ってしまったのは初めてである。
馬券を取った時はだいたい「うしっ!」とか「よしゃー!」と声が出る。
「やったー!!!」って。ダサかわいいな俺、と思いながら、まるで勝ったかのように足取り軽く家路につく。
思わずでる歓喜のアクションがサマになる男になりたい。理想はもちろんライアンムーア騎手。
モーリーファとの関係が途切れることなく、続くことが何よりも嬉しかった。
◇ レース結果 2017年8月20日(日)札幌3R 3歳未勝利〔D1,700m・14頭〕4着[11人気]
やや遅れ気味のスタートから少し行きたがりましたが、馬群の後ろに入れて折り合いを付けます。徐々にポジションを上げていって、直線で大外に出されると、ジリジリと伸びて4着でゴールしています。
丸山元気騎手「これまで短い距離を使っていたので、スタートしてから少し行きたがりましたが、そこで行かせてしまったらこれまでと同じ競馬になってしまうので我慢させました。すぐに折り合いが付きましたし、そこからは馬のリズムを邪魔せずじっくり追走して、向正面半ばから徐々にポジションを上げていきました。外々を走らされた割には最後まで頑張って走ってくれましたし、気持ちも切れていませんでした。やはり距離はあった方がいいタイプの馬だと思いますし、チークピーシズも必要ないと思います」
和田雄二調教師「勝ち馬とは離されてしまいましたが、最後はしっかり脚を使ってくれましたね。今回のように前半は我慢させて、終いの脚を活かす形がいいようです。次走の優先出走権を獲ってくれたので、状態に問題がなければもう一度札幌で出走させたいと思います」
■ 引き続き中1週で勝負の7戦目 初の馬券内を目指して 2017年9月2日(土)札幌3R 3歳未勝利〔D1,700m・14頭〕4着[6人気]
首の皮一枚繋がったものの、引き続き掲示板を外したら終戦であることには変わらない。
もちろん勝って欲しいが9戦中6回2着のある メモリーフェイス がいたこともあり、初馬券内を期待するも、結果は同じような内容で4着。
メモリーフェイスは遂に初勝利。池添謙一騎手のゴール後のガッツポーズは印象に残っている。
そしていよいよ後がなくなったモーリーファ。コメントからも切迫感が伝わってくる。
追い込まれたのは事実だが、毎回丸山元気騎手のコメントからはプロフェッショナリズムを感じ頼もしく感じる。
まずまずのスタートを切るも無理せず、道中は後方2番手を追走、3コーナーから徐々に前との差を詰めて行き、直線外に出して追い出されるとジリジリ脚を伸ばし、4着まで追い上げたところでゴールしています。
丸山元気騎手「まだ自分で競馬を作っていけるほどの体力は付き切っていないので、前走のように後ろからジックリと運びました。3,4コーナーで外から上がって行きましたが、途中でタレることなく最後までジリジリと脚を伸ばしてくれました。ただこの形だと堅実に走ってはくれるのですが、どうしても展開待ちになってしまう面がありますし、次のレースがラストチャンスということを考えると、次走は積極的に運んで勝ちに行く競馬をするのも一つの手かもしれません」
和田雄二調教師「ここまで続けて使ってきていますが、馬体重を減らさずに出走することが出来たのは良かったと思います。丸山騎手もモーリーファのことをよく分かってくれているので、上手く乗ってくれたと思いますし、途中で上がって行く厳しい形になってしまったものの、最後まで頑張って脚を伸ばしてくれました。以前は直線に向いて苦しくなるとズルズルと下がってしまうところもありましたが、この馬なりにだいぶ成長してきてくれているのだと思います。そういった意味でも何とか一つ勝って今後に繋げられるよう、中山開催に向けて進めていきたいと思います」
■ そしてスーパー未勝利戦へ 9/23(土)中山6R 3歳未勝利〔D1,800m・16頭〕9着[9人気]
残念ながら私は海外にいたため、生観戦することが叶わず。
知人が応援にいってくれたこともあり、なんとか良い所をみせてくれ、とハワイでトロピカルジュースを飲みながら祈っていたが、残念ながら吉報は届かず。
レースは前目につけられず後方から、最後やや伸びたものの9着に終わった。
もう出られるレースがない。
美しいハワイの夕日が沈む頃、終戦が決まった。
1ヶ月以上も前から覚悟していた現実が訪れただけ。受け入れるのに時間はかからなかったが、さすがリゾート、なんとも憎らしい演出に思えた。
トロピカルジュースからテキーラに飲み物を変えずにはいられなかった。
まずまずのスタートから内で脚を溜めようとしますが、行き脚なく離れた最後方からの追走となります。勝負所でも付いていけず後方に置かれてしまい、直線は大外に出してジリジリと差を詰めるものの、巻き返しならず中団でゴールしています。
丸山元気騎手「状態的には決して悪くなかったですし、ギリギリ我慢していたと思います。ただ使い詰めでしたし、輸送もあったので、北海道の時よりは若干硬さが出てきていました。それに今日は馬場が硬かったこともあり余計に響いてしまったようで、3,4コーナーでの反応が鈍かったです。直線はそれなりに伸びているので、せめて集団のすぐ後ろに取り付いていれば、結果は違ったと思います」
和田雄二調教師「北海道からの強行軍でいくらか状態が落ちていたかもしれません。勝負所での反応がもう一つでしたね。ここまでいろいろな条件を試してきましたが、この馬の適性を早めに見抜くことが出来なかったことが悔やまれます。結果を出せず申し訳ありませんでした」
これまでの競走内容を考慮して、今後について協議した結果、誠に残念ではございますが、このまま引退させることと致します。近日中に抹消の手続きを行わせていただき、28日(木)のサラブレッドオークションに上場する予定です。なお、規約に基づいて提供牧場に募集価格の10%で買戻され、この買戻し額が引退精算時に分配金の対象となります。サラブレッドオークションにおいて、この買戻し額を上回る金額で落札される場合もございますので、予めご承知おきください。
■ ありがとうモーリーファ
モーリーファはサラブレッドオークションにて今後は盛岡で競争生活を続けることになるようである。
デビューから9ヶ月で8戦、特に7月以降5戦走ったことも評価されたのではないか。
ただそれは漠然とレースに使われたのではなく、今回取り上げたように関係者の試行錯誤に支えられつつ、最終的には自らの頑張りで繋いでいった2つのレースも含まれる。
適性を掴むこと、相手関係を見ながらレース選択をすること、そしてレースでの作戦、
などなど、馬券を買うだけでは知り得なかった競馬の面白さを知るとともに、難しさも思い知らされた。
募集額1200万に対して獲得賞金は150万。
一口馬主デビューとしては失敗ということになるだろう。
だが、モーリーファが初めての出資馬となったことに、感謝こそすれ後悔は全くない。
最下位のスタートから、少しずつ順位をあげ、ギリギリの闘いで道を開き、そして力尽きる。
目立ちはしないがドラマチックな馬だった。
馬券を買っているだけではモーリーファをここまで知ることは決してなかっただろう。
そして気づいていないだけで、こういった馬は沢山いるのだろう。
当たり前ではあるが、人間と同じく、馬の数だけ馬の馬生があり、携わる人々を含めたドラマがあるのである。
勝つ馬を当てるだけでなく、一頭の馬に寄り添い、一喜一憂しながら競馬を知る。
そのスタートラインに立てた気がする。
少しでも良い馬生を過ごしてくれますように。
ありがとう、モーリーファ。